おすすめ育児関連書籍①「学力の」経済学
子育てに役立つ書籍を紹介
親の子育てはどうしたらよいか、どの家庭でもある問題です。
私は、正解はなく、それぞれの親と子どもの関係がすべて違うので、それぞれの関係において個々人が最適解を模索する努力をし続けるしかないだろう、と思っています。
しかし同時に、学問として積み上げられた教育に関する知識を一通り学んでおくことも重要だろう、と考えています。
最終的には「全部オレ流」もアリだと思いますが、定石を踏まえた上での自己流と、何も知らないのに自己流、では雲泥の差があると思うからです。
そういうことで、ちょこちょこと個人的に経験に基づく以外の、エビデンスに基づいて書かれている本を中心に教育・育児関係の本を読んでいるのですが、いくつかおすすめが出てきたので紹介したいと思います。
「学力」の経済学
- 作者: 中室牧子
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2015/06/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- ご褒美で釣っては「いけない」
- ほめ育てはしたほうが「よい」
- ゲームをすると「暴力的になる」
ご褒美で釣ってもよいのか?
このような問に答えるために巨額のお金をかけて、答えてしまうのがアメリカらしいところです。
この問へはまず、ご褒美を与えるとして、インプットへ与えた方がよいのか、アウトプットに与えた方がよいのかが検討されています(アウトカムは学力)。
すなわち
「テストでよい点をとればご褒美をあげます」
「本を1冊読んだらご褒美をあげます」
という子どもへの声掛けは、どちらがテストの点数を上げるのかということです。
直感的には、アウトカムを直接あげるよう指示している前者がよさそうですが、結果は逆でした。
子どもの成績を上げるには、具体的にどうしたらよいか=勉強の仕方を教えることが大切ということです。この差は、アウトカムにご褒美をあげる群に、教えるひとをつけることでなくなりました。
次に検討されたのは、ご褒美をあげることで子どもの「勉強する楽しさ」を損なっていないかということでした。
過去には、「献血をするとお金がもらえるようにすると逆に献血するひとが減ってしまう」というように、お金(=外的インセンティブ)を与えることで、社会的意義を感じるなどの内的インセンティブが損なわれるために結果的には望んでいない結末になる例が報告されています。
この点に関しては、後日の調査でご褒美(=外的インセンティブ)は勉強するのが楽しいという内的インセインティブに影響しないということがわかりました。
褒める場合の注意点
褒めることは、自尊心を向上させる効果があります。しかし学力と自尊心の関係について言えば、「自尊心が高いことは学力が高いことの結果」であるため学力をあげるために褒めて育てるのは得策ではありません(そんな親はいないとは思いますが…。)。
むしろ、褒め方が重要で、「能力」ではなく「努力」を褒めることがよいようです。
難しい課題を与えられたときに、能力を褒められた子どもは、努力を褒められた子どもより成績が悪くなりました。
能力を褒められた子は、うまく行ったときには「才能があったから」、うまく行かなかったときには「才能がなかったから」と解釈する傾向があったのに対して、努力を褒められた子はうまく行かなかったときに「努力が足りなかったからもう少しがんばってみよう」と考える傾向があったためと考えられています。
ピア・エフェクト
その他、友人や周囲から受ける影響をピア・エフェクトといいますが、
・学力が高い集団にいると自分も学力が高くなる
・ただしその効果は自分の学力が上位である場合のみで、自分の学力が低いと逆に学力は低下する
・問題児がいると学級全体の学力に負の影響がある
・習熟度別学級は全体の学力を押し上げる、特に学力が低い群に効果があった
などがわかっていることのようです。
子どもへの投資効果
文科省の調査によると、子どものいる家庭では年収の40%が教育費に当てられているとのことです。では、子どもへの投資で最も収益率が高い時期はいつでしょうか?
言い換えると、「子供の教育に時間やお金をかけるとしたら最も効率のいい時期はいつでしょうか?」
一般的な感覚では高校や大学など教育段階の高い時期と思われていますが、経済学者の一致した回答は「小学校に入学する前の就学前教育」です。
ただし、注意が必要なのはこれは学力のみについて語っている話ではなく、家庭でのしつけ、体力や健康に対する支出も含んでいるので、「小さい頃から塾へ行かせましょう」という単純なメッセージではないということです。
むしろIQや学力といった認知能力よりも、それら以外の忍耐や意欲、創造性といった非認知能力を向上させることが重要と考えられています。
この非認知能力については、中でも何がより重要なのか、それは鍛えることが出来るのかなど、研究が盛んな分野です。こちらに関しては、また別の書籍の紹介を通じて記事を書いてみたいと思います。
まとめ
「学力」の経済学、というタイトルで、学力にフォーカスをしぼった本ですが、そこで紹介される実験・解釈からは、子どもの学力を伸ばすということは、子どもが努力しやすいようにする、やる気を育てるなど、学力を向上させるためだけにとどまらないほとんどの子どもに必要なことであることがわかります。
親の子どもに対する影響は、普段かけるひとことひとことが非常に大きいです*2。
この本を読んで気に入ったことがあれば、実際の声掛けの場面を想像して、自然に使えるようにしてみると良いかもしれません。
「能力」ではなく「努力」を褒める」だったら、「○○はやれば出来るよ」や「すごい才能があるね」ではなく、「今日は1時間も勉強したんだね」や「今月は休まずに保育園にいけたね」など。